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IPWカフェを開催しました(2023年6月22日)

 13回目のIPWカフェのミニレクチャーの講師は、埼玉県立大学が単独でIPW実習を行っていた2008年から学生を受け入れてくださっている、国保町立小鹿野中央病院の元看護部長の大久保築世さん。町立病院から町の保健課長に移られた後も、小鹿野町を含む1市4町の秩父圏域の専門職連携にご尽力されてきた方です。


 ミニレクチャーのタイトルともなった「オーダーメイドのIPWってなんだろう?」という“問い”への回答は《答えは“ケース”が持っている》。すなわち、患者・クライアント・相談者とも呼ばれる医療・介護・福祉などの支援の対象者が持っている、表には出てきていない本当の希望や、生活全般にわたる困りごとを汲み取れた時にこそ、その人に本当にフィットした支援が行えるという理念のもと、小鹿野町では古くから専門職の連携に努めてきました。

 たとえば、大久保さんが勤めておられた国保町立小鹿野中央病院は、保健福祉センターと一体化した建物となっており、内部の扉を通じて雨の日でも傘をさすことなく移動できます。そのため様々な職種の専門職が病気や健康の相談だけではなく、経済的な困りごとの対応などにも迅速に対応できる体制となっています。

 こうした体制は、単に“ハコモノ”さえ整備すれば自然に出来上がるわけではなく、「個を支援する会議」と位置付けられた“地域ケア会議”や、「組織の隙間を埋める会議」と位置付けられた“包括ケア会議”を長年にわたり定期的に開催することで培われてきました。これらの会議では、残念ながら十分な支援を行うことができなかった事例の振り返りなども行い、現場の専門職や行政の職員・管理職が一堂に会して、それぞれの立場から「ケースに適した支援を提供するためにはどうする/どうあるべきか」について意見を交わします。


 そんな「オーダーメイドの支援」を模索していた小鹿野中央病院が初めてIPW実習の学生を受け入れたのは、大久保さんのご着任1年目の2008年。わずか3日間の実習で大きく成長する学生たちには毎回感心させられ、自身についても「教える立場の人が一番学ぶ」を実感していると言います。学生から「患者を車いすに移乗させる際のやり方がリハビリ・介護の職種ごとに微妙に違う」点を相談されたときは病院内の会議でも議題となり、また、実習に関わった他の専門職からも「自分たちは現場に着任して初めて“連携”を意識するようになったのに、彼ら彼女らは学生のうちからそれを体験できてうらやましい」との感想が寄せられているそうです。


 学生の実習にファシリテーターとして関わった経験も踏まえて、大久保さんの活動は「個の支援のためのオーダーメイド」から「仕組み・システムのオーダーメイド」へと広がってゆきます。

「《チームの一員として互いの価値観を認め合いながら、ケース主体の連携・協働の姿を学ぶ》というIPW実習のエッセンスは現役の専門職も体験すべきだ」と考えて小鹿野中央病院で企画実践した「接遇研修」は、その後「初期研修医地域研修プログラム」や「家庭医療専門医後期研修プログラム」といった形で秩父圏域全体に広がっています。

 また、専門職同士の情報共有・連携のためのツールとして始めた「私の療養手帳」には、患者本人が“自身の思い”を書けるようなページも設けられており、患者本人が亡くなってしまった後でも、介護を行った家族が当時を振り返って“思い出”として大切に保管されている例もあるそうです。


「地域包括ケアシステムの原点は“個”の支援」を唱える大久保さん。今後もIPW実習に参加する学生さんには、互いに本音を率直にぶつけ合う“嵐”を経た上でチームとしての合意形成を行い、目の前にいる“その人”にとって最適なオーダーメイドの支援を提供できる人材になってほしいと願っています。



答えは「   」が持っている

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