「偶数月開催」が定着しているIPWカフェの8回目を、6月10日にオンラインで開催しました。今回のミニレクチャーの講師は、埼玉県薬剤師会の社会保険委員会の委員で、新座市にある「かくの木薬局」にご勤務されている武笠真由美さん。ミニレクチャーのタイトルは「薬局における在宅の取り組み ~IPW実習の紹介もかねて~」でした。
一般の人からは「薬局の奥でいつも忙しそう」とのイメージを持たれがちな薬局薬剤師さんですが、平成27年に厚生労働省が「患者のための薬局ビジョン」を発出したこともあり、かつての「カウンターで薬を渡すまでの業務」から、現在では「患者中心の業務」へと、そのお仕事の幅を広げています。
具体的には一人の患者さんに複数の病院から処方されているお薬の全体像を把握する「患者情報の一元管理」や、薬に関するものはもちろん、薬以外の健康に関する相談にも応じる「健康サポート機能」などですが、薬局薬剤師さんが患者さんの自宅を訪問して服薬管理を行う「在宅対応」も行われています。
実際に患者さんのお宅を訪問してみると、飲み残した残薬が大量に発見されることがあります。こうした残薬の理由には、認知症などによる「飲み忘れ」、嚥下困難や併用薬が多すぎることに起因する「飲めない」、副作用の恐怖や、さしあたって症状がないことによる「飲みたくない」など、様々なものがあります。訪問した薬剤師さんは、それぞれの患者さんの特性に合わせて、根気強く説得して「飲みたくない」の誤解を解いたり、服薬支援機器を活用したりして残薬の発生を防ぎ、処方された薬が正しく効果を発揮できるようにします。
また「在宅対応」では、患者さんから詳しく話を聞いて生活全般の状況を確認することも重要な目的です。薬剤師さんだけでは対処が難しい場合は、医師やケアマネ、その他の医療・介護機関に話を繋げます。
かくの木薬局さんには、SAIPEが行っている大学生への連携力育成教育の総仕上げとも言える「IPW実習」にも以前からご協力いただいており、今回のミニレクチャーでは、学生たちが「薬局薬剤師の在宅対応」に同行した時の様子もご紹介いただきました。
「独居ではあるが、近所に生活を支えてくれる熱心なボランティアがいて、学生たちのインタビューにも喜んで答えてくれた患者さん」、「高齢夫婦お二人の世帯で、奥様が寝たきりで意思疎通もほぼ不可能な状態になっているが、あくまで自宅での介護を希望するご主人にインタビューする時の学生たちの真摯な態度」、「自宅内での移動も難しく、一度尻もちをつくと立ち上がることも困難な患者さんのために、建築の学生が中心になって色々なアイデアを出し合っていた様子」。
IPW実習の「施設ファシリテーター」を担っていただいている武笠さんにとっても、わずか数日の実習の期間内に「学生たちがディスカッションを重ねて一つのチームになってゆくこと」、「学生たちが適応力を発揮し大きく成長すること」への驚き・喜びを感じていただいているようです。
「患者さんの『やっぱり家で』をかなえたい」を目指して大きな進化を続けている現在の薬局。残念ながら一般の方にこうした努力が理解・浸透しているとは言い難い状況のようです。埼玉県内には厚労省が定めた基準を満たした「健康サポート薬局」が180、「地域連携薬局」が174あります。皆さんのご自宅近くにもきっとあるので、いつでも・気軽に・気兼ねなく相談できる「かかりつけ薬剤師」を探してみませんか?
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