11回目となるIPWカフェを12月13日にオンライン形式で開催しました。「公認心理師はチーム医療で何を見ているか?」と題したミニレクチャーの講師は、埼玉県公認心理師協会理事で、JCHO埼玉メディカルセンターにご勤務されている花村温子さん。このIPWカフェで講師をお願いするのが2回目ということもあって、改めて公認心理師という資格の歴史や、公認心理師が活躍する分野をご紹介いただいた後のお話は、他の専門職から相談されることも多い「難しい患者さんへの対応」を中心とするものとなりました。
“人”を相手とする職種であれば必ずと言ってよいほど「対応の難しい困ったお客さん」が存在しますが、医療の分野では「治療を拒否する」「医療者を見下し暴言を吐く」「やたらと依存的で自分から治療に取り組まない」などの形で現れます。
こうした時、公認心理師は「人間の思考や行動のパターンは、これまでの経験や過去の人間関係の積み重ねによって形成されている」と考え、その人を取り巻く家庭状況・病状・これまでの人間関係・行動パターン、すなわちその人のライフヒストリーを踏まえた上で本人の気持ちを理解しようと努めます。
実際に花村さんが対応された「ケアを拒否し、看護師に悪態をつく男性患者のケース」では、粘り強く患者さんとのカウンセリングを続けた結果「別れた妻と母がともに看護師だったので、病院で看護師を見ていると怒られているように感じる」「突然、命に関わる病状が判明して非常に不安」「仕事で失敗して一発逆転を狙っていたが、その願いもこの体ではかなわない」などを受け止めることができました。
こうした結果を病院内の“カンファレンス”で報告し、恐怖心からケアにあたることを敬遠しがちだった看護師さんたちからも話を聞くことで、「家族関係や過去の経験を聞いて納得できた」「自分たちも視野が狭かった」などの反応を得ることができ、その後の医療チームの活動が好転しました。
医療チームがいつも通りの機能を発揮できなくなる現象には、このように患者さん側に主な要因があるケースばかりではなく、「メンバーの異動」や「メンバー同士の人間関係」など、チームの側に主な要因がある場合もあります。また、患者や家族も含めた「チーム全体の力動」をアセスメントするためには、それを行う「公認心理師自身の考え方の癖」を自覚することも重要だとのことです。
公認心理師という国家資格もなく、心理士そのものに対する世間の認知度が今ほど高くなかったころから活躍されている花村さんが、お話の中で幾度か述べられていたのは「受容・共感・傾聴は一番の基本だけど、実はすごく難しい」ことと「自分の力量の限界を知る」ということ。
自分の限界を謙虚にわきまえつつも、受容・共感・傾聴、すなわち「相手が何を訴えたいのか」を柔軟に受け止めようとする姿勢を継続することこそが、花村さんのように多職種連携のチームで活躍するための資質なのかもしれないな、と感じさせる会となりました。
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