9回目にあたるIPWカフェを、8月25日に開催しました。今回のミニレクチャーの講師は、埼玉医科大学医学部准教授の米岡裕美さん。SAIPEの中核メンバーとして、様々なイベントにファシリテーションの技術を発揮して多大な貢献をいただいており、このIPWカフェや職能団体意見交換会の「常連さん」の中には、少なからぬ「米岡ファン」が存在するという方です。ミニレクチャーのタイトルは『ワークショップのつくり方 話し合いの進め方』でした。
Zoom利用のオンライン形式だったので、参加者全員が画面あるいはマイクをオンにして「こんばんは」と挨拶しあうところから始まった今回のミニレクチャー。お話は「ワークショップ(WS)と会議のちがい・共通点」から始まりました。
どちらも複数の人が集まって、ある程度方向性が決まったテーマについて話し合いを行うWSと会議ですが、一方のWSは「参加者が新たな気づき・学び・創造を得て、互いに親しくなること」を目的としたものであるのに対し、もう一方の会議は「チームや組織としての協働・行動・パフォーマンスを生み出す」ことを目的としている点に違いがあります。ややもすると堅苦しく・重くなりがちな会議にしても、WSと同様、参加者の自主性・納得感が重要です。これがないと「決めたはいいが、誰も動かない」結論になりかねません。
これら2種類の話し合いについて、「当初のテーマから話を大きくそらさずに」「参加者全員が納得できるように」「皆が活発なコミュニケーションをとれるように」促すのが、ファシリテーションです。
ファシリテーターが行う話し合いの事前準備では、ゴールと内容・方法とで構成される「場のつくり方」、すなわち会合のデザインが重要だ、と米岡さんは説きます。
話し合いのゴールとは、「会が終わったときに何ができていればいいか/どういう状態が理想なのか」を意味します。会議では「次の行動計画や役割分担」などの結論を得ようとすることが一般的ですが、WSでは「皆が真剣に考えた経験そのもの」が重要であるようなケースもあります。
内容については、まず、話し合いの場で何を考えて・話し合ってほしいのかを明らかにし、「それを参加者に問うときの表現には強くこだわっている」とのことです。《問いの表現》の仕方次第で、参加者の意識の焦点の当たり方が変わり、それに伴って話しの流れも大きく変わります。
方法については、利用する道具(付箋/模造紙/グーグルスライドなど)、手法(KJ法/対話/表などなど)のそれぞれについて多様な選択肢がありますが、グループ分けする際の人数とあわせて「自然にムリなく考えられるか・話し合えるか?」を念頭に置いて選んでいると言います。
実際に話し合いが始まってからの「場の進め方」すなわちホールドについては、ファシリテーターごとに個性が出るところだそうですが、準備段階でのツールの選択も含めて、「準備した問い」や「当日出てきた意見・情報」、さらには「当日合意できたこと/積み残したこと/今後誰がいつまでに何をするのか」などの《見える化》ができているかを重視されているようです。
その他ここでは紹介しきれませんが、ミニレクチャー最後には、ファシリテーターのTipsとして「参加者の助けを借りて進行を行うこと」「時間管理用のマンダラ」などの《奥義》もご披露いただきました。
もともとは教育行政学や生涯学習論がご専門で、「いかにして主体性を尊重しつつ大人への教育を行うか」を模索してきた米岡さん。ご所属のNPO法人日本ファシリテーション協会(FAJ)では、ファシリテーションを学びたい人・体験したい人向けの様々な活動が行われています。ファシリテーションを導入したい組織・グループへの支援を行うファシリテーションサポートプログラムなどもあるそうなので、少しでも関心がある方は、一度FAJでググってみてはいかがでしょうか?
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